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【SS】 親の心子知らず、もしくはジェネレーションギャップ

17時。

父「おい!千恵子!いま何時だと思っているんだ!まだ17時だぞ!」
私は気だるそうにリビングに現れた娘を怒鳴りつけた。
娘「…」
娘は私を無視して自室に戻ろうとする。
父「ちょっと待て!お前また、あの黒龍・F・ジャスティスとかいうヤツと会っていたのか!」
娘「…」
娘は、キッ!と私をひと睨みし、何かを言いかけたがフンッと鼻を鳴らして部屋に戻ろうとする。
父「千恵子!俺はお前をそんな娘に育てた覚えはないぞ!千恵子!」
娘「うるさいな!チエコチエコって変な名前、何度も呼ばないで!」
娘はイライラを募らせ、手に持っていた帽子を床に投げつけた。
父「千恵子のどこが変だっていうんだ。いい名前じゃないか!」
娘「おかしいよ!友達はみんな『緑輝(さふぁいあ)』ちゃんとか『泡姫(ありえる)』ちゃんとか、普通の名前なのに、『千恵子』とか変な名前をつけて!」
娘は自分の名前にどういうわけかコンプレックスを持っているらしく、事あるごとに名前のことで突っかかってくる。
父「『千恵子』。いい名前じゃないか」
娘「千の恵みに恵まれる子って何?!意味わかんない!?大切な名前なんだから目立てばいいってもんじゃないでしょ!」
娘のお決まりの言葉を聞き、私はため息を漏らす。親子の心、子知らずとはよくいったものだ。
父「まあ、名前のことは今はいい。問題はお前が黒龍・F・ジャスティス、くんと付き合っているってことだ」
娘「お父さんには関係ないでしょ!」
私は娘の言葉を無視して言葉を続ける。
父「黒龍・F・ジャスティスくんとは、どこまでいってるんだ」
娘「!」
娘の顔が、怒気か羞恥かのどちらに起因したか、赤く染まる。
父「まさか、・・・キスだけってことは・・・ないよな」
娘「!!だから関係ないっていってるでしょ!」
父「関係ある!娘の幸せを願わない父がいるわけないだろう!」
娘はハッと息を飲むと目をそらすと小声で呟いた。
娘「……て、手をつないだ」
父「…は?」
娘「だから、今日は手をつないだっていってるの!!」
私は不甲斐ない娘の言葉を聞いて頭がクラクラする。
本当に、今どきの子は…。
父「千恵子、黒龍・F・ジャスティスくんと付き合って、もう1年半くらいは経つんじゃないか」
娘「…2年」
…本当に我が娘は、『世間体』というものを考えない子だ。
父「2年も付き合って、妊娠もしてないなんてどう考えてもおかしいじゃないか。なあ、千恵子、黒龍・F・ジャスティスくんはもしかして…」
娘「失礼なこといわないで!!」
娘の剣幕に一瞬、言葉を止めたが、言わないわけにはいかない。ここは父の威厳がかかっている。
父「父さんはな、別に黒龍・F・ジャスティスくんが嫌いってわけじゃない。でもな、2年も付き合って女の子1人妊娠させられないっていうのはどうかと思う」
娘「…」
父「黒龍・F・ジャスティスくんだけの問題じゃない。千恵子にも問題があるんじゃないか」
娘は唇を噛み締めながら視線を落としている。
父「なあ、千恵子。お前ももう18歳だ。分別のある年頃なんだから、最低でも3人くらいの男性と同時にお付き合いして、25歳までには5人くらいの赤ちゃんを産むべきじゃないかな」
古臭い考え方だとは思ったが、娘の幸せのためだ。一瞬、千恵子の幼馴染でご近所に住む美々魅(みみみ) ちゃんが先日、3人めの子を産んだ話をしようとしたがそれは逆効果だと思い、口をつぐむ。
娘「…っってよ…」
父「ん?なんだ?」
娘「…っといて、放っといてっていってるの!!」
娘はそう叫ぶと、そのまま玄関に向かって走りだす。
父「千恵子!父さんは信じてるぞ!お前だって不特定多数の男性と付き合って、たくさんの子を産めるって信じてるぞ!!」
バタン!乱暴に閉じられた扉の音を聞き、私はため息を漏らす。はぁ、美々魅ちゃんは同時に5人の男と付き合っているっていうのにうちの娘ときたら…、育て方を間違えたのか…。

私はリビングに戻り、末端を手に取る。千恵子が家出するとなると行き先は限られている。5,000キロ離れた山の麓に住む、私の母、千恵子の祖母の元だ。

父「あ、母さん、私です。元気?ああ、うん、千恵子のことなんだけどさ、うん、家出しちゃって。恐らく3時間後くらいには定期シャトルで母さんのところに行くと思うから、うん。よろしく頼むよ。」

私は立体映像に映った30歳くらいにしか見えない母(53歳)に軽く頭を下げる。

祖母「光宙(ぴかちゅう)、お前のいうこともわかるけど、古い考え方を若い子に押し付けるのはほどほどにしなさいな。」
父「しかし、母さん、ボクにも世間体ってもんが…。」
祖母「世間体も大切だけど、千恵子の人生は千恵子のものだよ。」
父「そうはいっても…。」

私は、母の言葉に苦い顔をする。母のいうこともわかるのだが、ここでは昔から、「産めよ増やせよ」が国是(
こくぜ)となっているのだ。不特定多数の男性と交際し、多くの子を産む。多様な遺伝子を残すための先人たちの知恵だ。それが1000年続く伝統的な人類のあり方なはずだ。なのに千恵子ときたら、特定の1人と交際し、しかも2年経ってもキスすらしていないとは…。嘆かわしい!

父「まあ、とりあえず千恵子のこと頼みます。」

私は母との重力波通信を切り、窓の前に立つ。

千恵子…。私は古い人間だから、不特定多数の異性と付き合うことしか知らないんだ。新しい世代の、特定の一人を一生涯愛し抜く、という考え方が理解できないんだ。1000年も前のブルーホームでは、そういう考えもあったと聞くが…。とにかくお前には12人(1ダース)もの不特定多数の男の子どもを産んだ、あの母さんの子だ。いつかちゃんと更生してくれると信じているよ…。

赤暗い夜空には二つの月、フォボスとダイモスが薄暗く輝いていた。
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ねこさむらい

Author:ねこさむらい
猫をこよなく愛する天才こぴーらいたーが、トマトを育てたり、本を読んだり、自分でもよくわからない自身を分析したりするよ! で、現在、無職になっちゃった!? 絶賛再就職活動中ですわ!!

Twitter→ @catomato

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